2013-04-15
 Garage EDEN Blog


「旅の印-2」






しばらく前のこと。


しばらく前のこと過ぎてそれが一体正確に正しくいつだったのかは分からない。
絡み合った細い記憶のワイヤーをたぐり寄せてそれを明確にすることは今はもう
出来ない。
きっとしばらく前になにかを失った。失ったなにかはとても大きくて優しいものだった。
でもそれは帰省本能を失った渡りガラスのように2度と僕の元には返ってこなかった。
さらにはそれは大きい上に沢山だった。元々どれほどのものだったを把握出来るほど
出来た人間ではなかった。その時の僕には失ったそのものの大きさもその多さも知る
ことさえままならなかった。


2度と戻らないことがある。


例えば時間。


秒針の針は60回という数を数えひとつの円を描く。
どんなに嘆き悲しんでも、そして歓喜してもそのひとつの円を元に戻すことは誰にも
出来ない。例えばそれはピンクの色のついた砂が落ちる砂時計だって同じことだ。
反面それはただの喪失ではないと希望的な観測として言う事も出来る。それが記憶だ。
人は失ったものにさえそこに価値を見出すことが出来るからだ。とは言え記憶の薄い
僕は記憶の考察としての意味も込めて儚い文面を書く。


儚い文面。

食パンの上に書くような文面を。


ある願い。

願わくば、その日が訪れる時。それが澄み切った空の下にある晴れた日の午前中でないことを祈る。
ただそれだけだ。


世界は美しく素敵であるべきだ。

現実は違うと言う。

YES,そうかもしれない。

でも、夢の中と本の中では全ての世界は自由であるように。

それが現実の世界にあっても良いのだと思う。

多くの人はそれも嘘だと言う。

YES,そうかもしれない。


ただ、そうではないかもしれない。


パチンと音が鳴る。

スイッチの音だ。

ON・・・そしてOFF。


自分の為の照明を押すことが僕の役目。

黒い羊の世界はまだ始まっていないから。

幕が開く。

ステージは照らされている。


- 1973 -






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